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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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見解
 

2013年度「東京都予算案」「職員定数」等に対する見解と態度


2012年2月14日
東京都庁職員労働組合


1.はじめに

 東京都は、2013年1月18日、「平成25年度東京都予算原案」(以下「予算原案」)および「平成25年度職員定数等の概要」「平成25年度東京都監理団体所要人員計画の概要」を発表し、さらに同日「平成24年度最終補正予算案」(以下「補正予算案」)を発表した。
その後、200億円を財源とする復活予算を経て、1月25日「平成25年度東京都予算案」(以下「予算案」)を発表した。
 昨年10月25日、石原前都知事が国政復帰を理由に任期途中で突然辞任を表明し、国政では衆議院が解散したことで、12月16日に衆議院選、都知事選が同日投票日となって選挙が実施された。石原前都知事は辞任表明の際に後継者として猪瀬前副知事を推し、12月18日に猪瀬新都知事が就任した。異例の事態での予算編成作業となったが、1月4日から知事査定が実施され、例年とほぼ同じ日程で「予算原案」が発表された。また、国会解散に伴い、国家予算についても国会提出が大幅にずれ込む中での発表となった。
 猪瀬都知事は「予算原案」について、都独自の防災やエネルギー、少子高齢化対策に重点配分したことを強調し、「スピード、先駆性、健全性を備えた攻めの予算であり、国や民間を動かし、新たな東京モデルを発信する」と説明している。
 「予算原案」と同時に、「2020年の東京」の2013年度からの3か年計画である「『2020年の東京』へのアクションプログラム2013」を発表した。「2020年の東京」は、東日本大震災の発生を受けて「10年後の東京」計画を充実・強化する位置づけで、2011年12月に新たに策定されたが、「高度な防災都市の実現」を第一に掲げる一方で、「2020年オリンピック招致」を成功させることで「東京から日本を牽引」し、「日本を豊かで元気」な社会に変えるとして、「10年後の東京」計画を基本的に踏襲した中期計画となっている。
 猪瀬都知事は「アクションプログラム2013」の巻頭で、「自助・共助・公助の力で首都直下型地震への備え、電力エネルギー改革、オリンピック招致、地下鉄一元化」を計画の具体化として示し、「改革をスピードアップし、ブラッシュアップしていく」としている。
 猪瀬都知事が強調する防災、電力改革、少子高齢化対策などに新規事業及び予算化が実施されたものもあるが、「予算案」及び「アクションプログラム2013」は、オリンピック招致への前のめりの姿勢も含めて、都市基盤整備をはじめとする大型公共投資に予算を重点配分する「経済活性化」政策が中軸であることに変わりはない。
 職員定数では、全体で231人減員となった。国の35人学級の実施に伴い学校職員が129人増員となっているが、知事部局はスポーツ振興局のみ9人増で増減計121人削減、公営企業体は110人減員となっている。警視庁の定数については現時点では未確定であり、総計は変更となる可能性がある。
 予算編成方針では、「将来に向けて施策を支えうる財政基盤を強化」するため、「都政改革を推進」するとしているが、これまでの「都政の構造改革」で、行政の市場開放と人件費削減を目的とした民間委託や民間移譲が拡大され、指定管理者制度の導入、地方独立行政法人化、アウトソーシングなどが推進され、2万人に及ぶ定数削減が強行されてきた。
 「将来に向けて施策を支える」ためには、執行体制の確保と事業の安定的運営が不可欠である。当局の「少数精鋭」「効率的執行体制の確立」という査定方針による削減強行は、恒常的超過勤務をはじめ職員への労働負荷を高め、知識と経験の継承を困難にさせ、労働環境の悪化を加速化している。施策の充実のためには適正な人員配置が不可欠である。
 都庁職は、都民の生活に根ざした都政運営と都庁労働者の労働環境改善・要求実現を目指して「2013年度東京都予算・人員に関する基本要求書」を都当局に提出し、その実現に向けた取り組みをすすめてきた。しかし、「予算案」及び「定数査定」は都庁職の要求に応えず、依然として格差拡大と賃金低下が続く社会で、セーフティネット機能の拡大や公共サービスの充実を求める都民の要求に応えるものにはなっていない。
 都庁職は、「予算原案」発表時に、「抗議声明」を出し、基本的見解と抗議の意思表明を行なった。「予算案」が確定した今日、その問題点と今後の闘いの方向を示すため、あらためて「見解と態度」を明らかにするものである。

2.「予算案」の特徴と問題点

(1)編成方針および全体フレーム
 「予算案」は、「時流を先取りし、首都として国を動かし支えていく原動力となるとともに、将来に向けて財政基盤を一層強化し、東京の輝きを高めていく予算」と位置づけ、@ 国を動かし、民間活力を引き出しながら、新たな東京モデルを発信するとともに、都民の安全・安心を守り、東京から日本を支える、A将来に向けて施策を支え得る財政基盤を強化するため、施策の効率性や実効性を向上させる取組を徹底し、都政改革を推進する、ことを基本として「アクションプログラム2013」として選定された平成25年度事業への確実な予算計上を行うことが示される一方、全ての施策についてスクラップアンドビルド、事業評価の徹底、民間活用の推進で厳しく精査することを求めている。
 また、職員定数については、引き続き事務事業の見直しやアウトソーシングの推進で削減を図るとしている。
監理団体についても、指定管理者制度の導入や公益法人制度改革など環境の変化の中で存在意義の検証や事業の不断の見直し、財政支出の削減を図るとしている。
都税収入が増収に転じる状況となったが、「将来に向けての財政基盤の強化」を前面に打ち出し、重点事業への予算配分は確保しながら、事務事業見直し、職員定数削減、民間委託拡大を推進して、さらに歳出抑制をしていくことを編成方針としている。
 「予算案」は、全会計合計で12兆838億円(前年度比2.6%増)、そのうち一般会計は前年度比1,150億円(1.9%)増の6兆2,640億円で、5年ぶりの増額となった。復興需要等により法人二税の増収で都税収入が増に転じたが、依然としてリーマンショック直後の水準に止まっていることを理由に、「財政基盤強化」のため、事業評価や施策全般についての厳しい検証を行う「自己改革」の取組みを徹底し、これまでに増して歳出抑制を行ったとしている。財政運営の備えを強調する一方で、「都民の安全・安心の確保」については、木造密集地域対策等防災対策を重視しつつも、幹線道路の整備など投資的経費に予算が重点的に配分されている。猪瀬都知事が重要視している少子高齢化対策については新規事業があるものの予算措置は微増にとどまっている。医療・福祉・雇用・住宅など都民の「安全・安心」確保のために必要な施策の充実については、一部予算増となった事業もあるが極めて不充分であるといわざるを得ない。

(2)歳入について
 @ 来年度の都税収入見込みは、4兆2,804億円で前年度比1,609億円(3.9%)増収と見込んでいる。平成24年度当初予算では、2.4%の減収を見込んだが、平成24年度最終補正予算では、当初見込みから1,040億円の増収で4兆2,236億円となり、5年ぶりの増収となった。平成25年度も増収となれば2年連続の増収となる。  税目では法人二税について前年度比14.0%増収、固定資産税・都市計画税についても0.9%増収と見込んだ。2007年を頂点として5兆円規模に達した都税収入は、2011年度まで連続して減収となっていたが、復興需要等で企業収益が増益となった結果、法人二税の増収となった。当局も述べているが、収入水準はリーマンショック直後と同水準であり微増にとどまっている。
 A 都債は、4,485億円で前年度比450億円(9.1%)減とし、起債依存度は7.2%で前年度比0.8ポイント低下し、11年度から微増傾向が続いていたが、3年ぶりの減となった。国が約50%の起債依存度であることと比較して都財政の健全性を強調しているが、起債残高は6兆6,473億円であり税収の1.5倍となっている。
 B 基金については、「施策展開に必要な財源として、中長期的な視点に立って、基金を適切に活用」するとして、社会資本等整備基金などの特定目的基金554億円、財政調整基金1,769億円を取り崩すとしている。「最終補正予算案」で基金の取崩所要額を抑制した結果、平成25年度末で活用可能な基金残高は、前年度より372億円増の8,741億円を確保したとしている。東京都の「活用可能な基金」は、五輪開催準備基金(4,126億円)を含め財政調整基金等6項目である。
 C 使用料・手数料については、受益者負担と住民間の負担の公平を図るという観点から、一般会計での改定6項目(都立公園の土地使用料等)、新設1項目(都立霊園の埋蔵施設使用料等)とし、初年度以降の増収見込み額は0.1億円としている。

(3)歳出について
 一般歳出は4兆5,943億円で、対前年度比712億円(1.6%)増となった。経常経費については、「内部努力に取り組み、給与関係費などを削減する一方で、少子高齢化対策や中小企業への支援など都政が直面する課題に的確に対応した結果」として3兆7,361億円で前年度比637億円(1.7%)増となっている。経常経費のうち、給与関係費は退職手当の見直しや減額給与改定などで、前年度比154億円(1.0%)の減となり、団塊の世代の大量退職期に一時的に増加したが、この11年間では、2,347億円、13.5%減少している。
 他の経常経費は、目的別内訳で「福祉と保健」が前年度比1.6%増で構成比の22,1%となっているが、昨年と構成比は同率であり、社会保障関連の義務的経費の当然増である。5年ぶりにプラスに転じた予算であるが、投資的経費を除き生活に密着した福祉、医療、雇用、教育等については、ほぼ横ばいか微増となっている。
 投資的経費は、8,582億円で前年度比75億円(0.9%)増となり、9年連続で増加している。「木造密集地域の不燃化・耐震化などの災害に強い都市づくり」「東京の国際競争力の向上に資するインフラ整備を着実に進める」として、木造密集地域不燃化や橋梁等社会資本ストックの老朽化対策など「都市基盤の高度防災化」を進める一方で、「活力と魅力を高めるまちづくり」として、幹線道路の整備や都市再生事業を推進し、「投資効果が高い」とされる事業に優先して予算配分を行う路線を継続している。
 @ 予算案では、「主要な施策」を「東京の輝きを高め、都民の安全・安心を確立する取組」として位置付け6項目に区分している。主な項目は以下のとおりである。
ア.災害に強い都市づくり
 「都市基盤の高度防災化」として、木造密集地域の不燃化事業の加速化、インフラ整備、公共建築物の耐震化、津波・高潮対策等に昨年比191億円増とした。
 災害対策のソフト面では「災害対応力の強化」として、帰宅困難者対策、応急対応力・地域防災力の向上、情報通信の確保、災害医療対策等である。木密地域の不燃化対策については、地域社会のつながりや高齢者対策など生活に配慮した取組が求められる。
 猪瀬都知事は、自助・共助・公助の具体化として「隣組」や「防災教育」「消防少年団の育成指導」の推進に加えて、情報体制を強化するとして新規にSNSの活用などを盛り込み昨年比2倍強の15億円とした。災害医療対策については、「災害拠点連携病院整備事業」「広域災害救急医療情報システムの整備」など新規事業に着手するが、昨年比2億円の増にとどまっている。原発事故に伴う「放射能対策」については、昨年20億円の増としたが、平成25年度は新規の対策を示していない。
 被災地・被災者支援は昨年に引き続き任期付職員の派遣、被災地応援ツアー、都内避難者への経済的支援・生活支援に127億円予算措置をしている。
イ.エネルギー政策の推進
 昨年の0.4億円に対して大幅に増額して103億円としている。猪瀬都知事は副知事時代に手がけた事業に加えて「スマートエネルギー都市の実現」や「老朽火力発電所リプレースに関する検討」「島しょ地域における再生可能エネルギー導入可能性調査」など、新規事業でエネルギー対策への意欲を示している。
ウ.安心できる都市の実現
 7つの課題を設定し、合計総額は1,342億円で、昨年の1,275億円から約67億円増とした。待機児童対策としてこれまでの認証保育所事業等に加え、新たに「小規模保育整備促進支援事業(東京スマート保育)」を実施するとしている。小泉構造改革で公立保育園の民営化が進み、民間企業が保育行政に参入する一方で待機児童は増え続けた。東京都は独自に認証保育園制度を創設し、新たに「東京スマート保育」を創設するが保育内容や保育料の自由設定(上限あり)など問題は多い。また、小規模保育事業は国の「子ども・子育て関連3法」で15年度以降に助成枠が創設される方針だが、今回の都の取組は国の取組を踏まえた前倒し的な取組となっている。
 高齢者対策、障害者支援、医療、雇用対策等都民にとって重要な施策だが、「医療体制の確立」は前年度比2億円の減、「雇用就業対策」は前年度比7億円減となっている。高齢者対策、障害者支援への予算増など一部評価できるものもあるが、年収が低下し続け、雇用問題等都民の厳しい生活実態を踏まえた十分な予算措置が必要である。
エ.東京の強みを活かした産業振興
 産業振興については、前年度比244億円増の3,495億円となっている。そのうち、中小企業制度融資等金融支援策が3,318億円で238億円増となった。「観光まちづくり推進」は新規事業を含め10億円増の45億円としている。一方で、「商店街の活性化支援」は13億円減の28億円となっている。大型都市開発等で小売業は壊滅的な打撃を受けており、地域活性化のためにも対策が必要である。
オ.活力と魅力を高めるまちづくり
 主に「道路の整備」や「東京港の整備」、「公園の整備」等インフラ整備等が中心となっている。総額3,085億円のうち1,141億円が幹線道路、環状線の整備である。
 「豊洲新市場の整備」については、昨年の606億円から大幅減の263億円となったが、土壌汚染対策の関係で移転時期が15年度に1年延期となった。土壌汚染については食の安全確保から内容を明らかにさせる必要がある。臨海部開発を大都市開発の中心に据えてきた施策は、ヒートアイランド現象など環境にも影響を与えることが懸念されている。これまで進められてきた施策の検証が求められている。
カ.一人一人が輝く都民生活の実現
 教育、青少年育成、芸術文化・スポーツ振興等に総額565億円で、前年度比84億円の増となっている。いじめ対策は、スクールカウンセラーを全小中学校に配置するなど前年度比2倍の39億円とした。オリンピック招致については、今年9月のIOC総会に向けて前年度比11億円増の31億円としている。前都知事の方針を継承し、オリンピック招致があたかも国民生活を豊かにするかのように喧伝し、大震災からの「復興支援」をも理由にして招致活動を活発化させている。しかし、被災地からの避難・転居者は1月末現在約31万人であり孤独死も報じられている。真の「復興支援」は、国や自治体が被災地や原発事故から目を背けず、具体的な支援を率先して行うことである。
 A復活予算について
 復活予算については、都議会各会派の復活要望を中心に、都民の要求を反映したかの様な体裁をとって例年同様にあらかじめ措置していた200億円が復活財源となっている。
 その結果は、昨年と同様に「都市基盤の整備」がトップで約56億円であり、「区市町村の振興」等で約51億円、「福祉・保健・医療の充実」は約54億円、「教育の充実」は、私学助成等で約13億円、「産業振興と雇用対策の推進」で約18億円となっている。

(4)定数査定について
 @ 2013年度職員定数は、東京都全体では231人の減となった。内訳は、知事部局等職員が121人減、公営企業職員が110人減、学校職員は国の35人学級実施に伴い129人増、消防庁職員は2人減である。警視庁の定数は国の政令に基づき確定するものとなっており、現時点では確定されていない。
 A 2013年度知事部局職員定数は、増員419人・減員540人で差引121人の削減となった。主な増項目は、総務局が住宅・土地統計調査の実施等で17人、木造密集不燃化10年プロジェクトの推進で主税・都市整備・建設3局合計で17人、スポーツ振興局はスポーツ祭2013実施等で9人、オリンピック招致で5人、福祉保健局は児童相談体制の強化で13人、萩山実務学校の寮増設で10人等である。
 主な減項目は、主税局自動車税等関連業務の委託拡大で13人、福祉保健局・社会福祉法人の認可業務の区市町村への移管で3人、建設局・道路巡回業務の委託拡大で2人、教育庁・都立図書館の資料管理業務の見直しで2人、総務局・経済センサス活動調査審査等の終了で16人、建設局・全国都市緑化フェアTOKYOの終了で11人、港湾局・水門遠隔制御システム整備の進捗に伴う見直しで3人、福祉保健局・高齢者施設の利用者定員見直しに伴う減で31人等である。
 各局の増減計は、増員はスポーツ振興局の9人増員のみで、他の局はすべて差引で減員及び現状維持となった。局別の主な定数削減は福祉保健局36人、主税局35人、建設局14人、都市整備局11人、合計96人で定数削減の約8割となっている。
 現業職員については、自動車運転、道路巡回、施設管理、給食調理などの退職不補充・民間委託が引き続き進められている。
 これまで、多くの福祉施設の民営化が促進され、さらに「事業評価」「新たな公会計」等によるコストパフォーマンスの導入により、民間経営手法を取り入れた地方独立行政法人化、公社化、指定管理者制度の導入など都民施策の変質・都民サービスの低下が進行している。執行体制については、「少数精鋭」「効率的執行体制」の査定方針の下で、これ以上削減できない職場実態を無視して今年も定数削減が強行された。
 B 監理団体の定数については、昨年度の10,219人から10,518人へ299人の増員となった。その内、監理団体に派遣する都職員数は2,492人で前年度比156人の減となり、引き続き固有職員の割合が拡大している。
 平成25年度予算編成方針では、監理団体について「経営の効率化、自立化の促進及び都と監理団体との役割分担の観点から、補助及び委託の内容・方法等必要な見直しを行い財政支出の削減を図る」としている。コスト主義の徹底で経費削減を強制することは公共サービスの低下につながるものである。

(5)組織改正
 知事部局の組織改正は、水門や防波堤などの海岸保全施設の耐震対策を着実に推進するとして、港湾局東京港建設事務所の組織再編が行われた。

(6)その他(専門分野における人材育成の新たな取組)
 その他として、人材育成の新たな取組が示され、建設局で土木技術の新規採用を対象にした実務を通じた育成、福祉保健局で経験の浅い児童福祉司を中心に、OBを活用した実践的な研修が取組として示されている。
 人材育成については喫緊の課題であり、ギリギリの定数配置により現場の経験や知識が継承できない実態があることを直視し、適正な人員配置を行うことが必要である。

(7)2013年度最終補正予算案について
 都税収入は、復興需要等企業収益の増で法人二税が増数となり、当初予算より1,040億円増で4兆2,236億円となった。
 歳入歳出予算の執行状況では、退職手当の見直し等に伴い給与費で289億円の減、契約差金、補助金等の交付実績等で1,069億円の減となっている。
 補正予算の規模は、一般会計でマイナス148億円、全会計では559億円増となり、今年度当初予算11兆7,858億円に対して11兆8,417億円となる。
 尖閣諸島寄附金のうち14億円については、基金を設置し「国による尖閣諸島の活用に関する取組に資するため、基金を設置する」としている。また、寄附金の一部を尖閣諸島における調査等の支出に充当するとしている。
 他の自治体の地域であり、かつ当該自治体や国を飛び越えて、他国との防衛や外交問題が惹起することを想定しながら、暴力的ともいえる独断専行で発言し行動した前知事の責任は重い。今後の取り扱いについては、冷静かつ客観的歴史観に基づき、行政のなすべき役割を踏まえて対応をする必要がある。

3.都庁職の見解と態度

(1)2013年度(平成25年度)予算案は、猪瀬新都知事による初めての知事査定が行われ策定されたものである。前都知事の突然の辞任による都知事選挙が予算編成作業の只中で実施されたことや、新都知事が石原都政の下で約5年半副知事を務めてきたことから、「予算案」は石原前都知事の下で策定された「2020年の東京」に掲げられている施策を具体化するものであり、石原都政の路線を基本的に踏襲するものとなっている。都税収入は5年ぶりの増収となったが、経済情勢が先行き不透明であることや収入水準がリーマンショック直後のレベルにとどまっていることを理由に、「将来に向かっての財政基盤を強化」するため、引き続き「都政改革」を推進するとしている。
 石原都政の13年間は、2001年に発足した小泉政権の「聖域なき構造改革」を先取りして「都政の構造改革」の名の下で都政リストラを徹底的に推進し、2万人に及ぶ人員削減と「住民の福祉の増進」という地方自治本来の責任を投げ捨て、本来行政が直接行わなければならない事業までをも営利目的の民間企業に丸投げする民営化を推し進めてきた。都政リストラで政策的経費を抑制し、その上で大企業の利益を優先する大型公共事業を中心とした投資的経費を膨張させてきた。
 石原都政13年間の検証と自治体行政の果たすべき役割を真摯に問い直し、公務公共サービスを拡充し行政水準の質を高める方向に転換することが求められている。
 「予算案」と同時に発表された「アクションプログラム2013」では、東日本大震災や原発事故を受けてのエネルギー政策の転換、首都直下型地震への備えなど「都民の安全・安心」を確保する政策が前面に押し出されている。しかし、年収200万円以下の貧困層の増加、非正規労働者が3割を超える実態や社会保障における受益者負担の増加など、都民の生活不安を解消するための施策の充実なくして都民の「安全・安心」の確保は万全とはいえない。「2020年の東京」計画が2020年オリンピック招致を照準にして都市整備・都市再生の根拠にしていることは明白であり、2016年招致運動も含めて都民不在の招致方針を見直す必要がある。また、企業利益を優先させる「成長戦略」型の都政運営が都民の生活を豊かにしてきたのか検証しなければならない。
 都庁職は、住民の生命と生活を守ることを基礎にした自治体の果たすべき役割を担う立場から、石原都政を基本的に継承している「予算案」については断じて容認できないものであり都民要求と都庁職要求実現のために粘り強く闘い抜くものである。

(2)「平成24年度予算編成方針」では、「財政の備え」を主張して「都政改革」を推進することを強調しながらも、予算配分については、「アクションプログラム2013」に選定された事業については確実に予算を計上するとしている。
 「アクションプログラム2013」の今後3年間の総額は約2.6兆円、2013年度は7,800億円が計上されている。2013年度の内訳は、震災対策も含めて「都市基盤整備」「インフラ整備」が約5,520億円で、予算額の70.7%を占め、少子高齢化、障害者、医療対策は690億円で8.8%にとどまっている。3か年計画でも大型公共事業投資が約2兆円強で予算の75.6%を占めている。
 一般会計の経常経費では、社会保障関連の義務的経費が1兆円を超えているが、医療、福祉、雇用、住宅対策等については前年度比で微増か横ばいであり、一部施策は予算減となっている。このことからも大型公共事業へ予算を重点的に配分し、大企業利益を優先する姿勢が鮮明になっている。石原都政13年間で都民の暮らしに密着する都立施設のほとんどは民営化され、PFI、指定管理者制度、地方独立行政法人化、アウトソーシングなど行政で行うべき事業を民間市場に開放し、行政の役割を変質させてきた。都庁職は、行政本来の業務である住民福祉の充実・公共サービスの充実に重点的に予算配分を行い、「都民の安全・安心」確保を目指す都政運営の中軸に据えることを要求する。

(3)東京都は、予算編成の一環として「事業評価」を実施し、今年度は新たな取組として「これまでの各種監査報告を活用し、類似事例への積極的な検証を行うとともに、監査結果に基づく見直し内容を評価し、迅速かつ的確に予算へ反映する仕組みを導入し」「新たな公会計手法を用いたコスト分析を積極的に活用するなど、評価の取組について一段の底上げを図った」としている。また、監理団体や報告団体には「必要性や有益性、団体が実施する妥当性などを検証」するとして「支出評価」を課している。
 「事業評価の公表」や「新たな公会計制度」の導入は、都民に対する「説明責任」を目的の一つに掲げてはいるが、都政に民間経営手法を持ち込み、「経営」困難な事業は廃止若しくは民間委託・移譲により安上がりな行政を推進していくために導入したものと言わざるをえない。すでにほとんどの福祉施設が民間委託され、業務委託が実施されているにもかかわらず、さらにコスト主義を徹底するものである。  業務の効率性を高めることや施策の必要性を検証するためには、行政の最前線を担う職員の意見や職場実態に基づき適切に人員配置及び業務改善を実施するべきであり、コスト主義への偏重は公共サービスと行政の水準を低下させるものである。

(4)知事部局職員定数については、1999年度が約45,000人だったものが2013年度では、24,980人と半減している。執行体制が危機的状況であることは、各局所要人員要求で全ての局が最低でも増減ゼロを要求していることに切実さが表現されている。しかし、2013年度査定においても121人の削減が強行された。
 超過勤務については、平成24年度上半期は前年度・前々年度に比して増加傾向となり、超過勤務の恒常化と過密労働により職場は疲弊している。
 さらに、団塊の世代の大量退職・長年の採用抑制の影響、大幅定数削減により知識や経験、技能・技術の継承、人材育成が深刻な課題となり、職員の負担は過重なものとなっている。職場実態を顧みない定数削減は、行政運営の水準の低下を招きかねず、正常な執行体制の限界を超えていることは明らかである。
 長期病気休暇の疾病割合では「精神疾患」が約6割を占め、職員の安全衛生の観点からも労働環境の改善と執行体制の安定的確保は急務となっている。
 現業職員については、平成25年度定数査定においても、自動車運転や道路巡回、施設管理、調理などの退職不補充・民間委託が進められている。
 公共サービスの充実、危機管理、防災対策の充実のためには、業務量に見合った職員配置が前提であり、とりわけ都民サービスの最前線で業務を遂行する現業職員の配置は不可欠である。知事部局職員の道理のない定数削減は断じて認められない。

(5)都庁職は、都民の安全・安心を確保するための防災対策や老朽化した公共施設・道路等の補修、改築等を行うことは否定するものではないが、これまで進めてきた大規模開発・都市基盤整備の大型開発事業に優先的に予算配分を行う財政運営を抜本的に見直し、自治体本来の責任を果たす施策を優先させることを主張してきた。
 10年以上も下がり続ける年収や非正規労働者の増加、急激な少子高齢化、貧困と格差の拡大など都民の生活は厳しい環境に置かれている。これまでの都政運営を継承する「予算案」に反対するとともに、石原都政13年間は都民の生活を豊かにしてきたのかを真摯に検証して、以下に示す方向で抜本的な政策の見直しを行うことを求める。
 @「2020年の東京」計画については、「10年後の東京」を継承する大型公共事業を直ちに中止し、「投資的経費」を抑制して、都民の安全・安心を確保する防災対策やセーフティネット機能の充実を図る施策を実施すること。防災対策を「自助・共助」という名で都民の「自己責任」とすることなく、公共施設や社会的施設及び行政の執行体制について危機管理に対応できる体制を確保すること。
 A 都税を有効に活用し、福祉、医療、雇用、住宅、子育て、教育等生活に密着した施策を拡充し、福祉関連公共事業等への投資や雇用を創出し都民の暮らしの安全・安心を実現すること。
 B 首都高速道路(環状品川線)の整備等国が本来負担すべきものについては東京都の財政支出を取りやめること。また、直轄事業負担金等、国に強制された支出を停止すること。
 C 地方自治体財政の安定と住民福祉を基本にして、法人事業税の地方法人特別税も 含めて、税制の抜本的見直し・検討を行い、地方消費税によらず地方交付税の財源保障調整機能を回復させ、地方財政を確立すること。
 D 新規都債の抑制と低利借り換えによる公債費負担の一層の軽減を図ること。

(6)都庁職は各局要求の提出時期や査定作業の進捗にあわせて闘争を構築してきた。
 2012年4月に2013予算・人員要求闘争方針を確認し、7月に「基本要求」を提出し、各支部・職場から職場要求を集約して当局との予算・人員検討小委員会において要求書を提出し、要求の実現を求める協議を行った。
 2012年9月には、支部ごとに総務局調査課に対する要請行動を実施した。予算編成及び定数査定作業が進んだ11月には、都議会各会派要請を行い、検討小委員会では各支部の重点要求を提出し具体的な主張を行った。
 さらにステッカー闘争、全組合員署名や局長・所属長要請など職場からの取り組みを行い、12月6日には、各支部交流決起集会、総務局要請行動を実施して都庁職要求の実現を求めた。予算編成に関わっては、公共サービスの第一線で働く職員の意見を集約した要求を基に、福祉・医療・教育・雇用・住宅など、都民施策の充実に都政の重点を置き、行政責任が果たせる執行体制を要求してきた。
 加えて賃金確定・予算・人員闘争を一体の闘いとして、「島しょ要求」「障害者要求」「研修要求」「新宿庁舎改善要求」を提出し、要請行動等を実施し要求実現を求めた。
 しかし、都当局は都庁職の要求に応えず1月18日「予算原案」の発表と定数通告を都庁職に対して行った。都庁職は、職員の労働条件改善・職場環境改善の取組を、東京都の行政運営の水準を高め、公共サービスを充実させていくことと一体のものであると位置づけ、引き続き以下の点を基本として都民の要求にこたえる予算編成を求め、都政のリストラ攻撃を許さず闘い抜くものである。

 @ 「防災対策」については、老朽化した都民施設やインフラ施設等の改修、改築は当然のこととしても、オリンピック招致や防災対策をも利用した大型公共事業に重点配分する予算編成に反対し、都民の真の安全・安心を重点に置いた実効ある防災対策と、「格差と貧困」が拡大している都民の暮らしを改善するために、福祉・医療・雇用・住宅・教育をはじめ、都民福祉に重点を置いた予算編成を求める。
 A 予算・人員に関わる課題は職員の労働条件に直接影響を与える。「予算・人員検討委員会」においては、当局の「管理運営事項」との態度を改めさせ、具体的・実質的な協議ができるようさらに取り組みを進める。
 B 連綿として続く定数削減を許さず、被災地支援を継続し、首都直下型地震等の災害発生時に行政組織と執行体制が機能不全とならないためにも執行体制の拡充・強化を求める。
 C 事務量や職場実態に見合う職員定数配置・職場環境改善を求める取り組みを強化し、また、業務を支える職員の専門性を維持・確保するために、知識・経験、技術・技能の継承、人材育成を着実に実行できる体制の確保を求める。また現業職員の退職不補充方針を撤回させ、業務委託の拡大を阻止し、新規で補充することを求める。
 D 以上の要求実現のために、これまでの予算・人員要求の取り組みについて各支部とともに検証し、都民の安全・安心、暮らしを守る取組と反合理化闘争を一体のものとして運動を進めいていく。
 
以上

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