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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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見解
 

2008年度東京都予算案に対する見解と態度

2007年2月7日
東京都庁職員労働組合

1 はじめに

 東京都は2008年1月18日、「平成20年度(2008年度)東京都予算(原案)」(以下「予算原案」)および「平成20年度組織改正及び職員定数」「平成20年度東京都監理団体所要人員計画」を発表し、さらに1月18日「平成19年度最終補正予算案」(以下「補正予算案」が発表された。
 その後復活要求を経て2月4日「平成20年度(2008年度)東京都予算案」(以下「予算案」)を発表した。
 この「予算案」は過去最高の都税収入増を見込み、巨額な予算を「『10年後の東京』実行プログラム2008」に基づく三環状道路など都市基盤整備やオリンピック招致などに配分し、また各種基金を積み増しながら、福祉・医療・教育・雇用など都民生活に直結する施策への配分は低く抑えている。さらに「行財政改革実行プログラム」による都政リストラを着実に実行し、自治体の市場化を進めるものであり、「新自由主義」に基づいて政府・財界がねらう「構造改革」路線を具体化するものである。

 都庁職は、08予算人員闘争において都民本位の都政運営と都庁労働者の諸要求実現をめざし、職場から積み上げた「2008年度東京都予算・人員に関する基本要求書」を昨年7月都当局に提出するなど、要求実現に向け取り組みをすすめてきた。しかし示された「予算案」や「職員定数」は、都庁職の要求に全く応えず、生活改善等を求める都民要求に逆行するものである。都庁職は「予算原案」発表時に「抗議声明」を出し、基本的見解と抗議の意思表明を行なったが、確定した「予算案」の問題点と今後の闘いの方向を示すため、「見解と態度」を明らかにする。

2 「予算案」の特徴と問題点

(1) 編成方針および全体フレーム

 「予算案」は過去最高の都税収入を見込み、全会計の合計で13兆3,855億円(前年度比2.4%増)、そのうち一般会計は6兆8,560億円(前年度比3.8%増)で、バブル期に匹敵するほどの大きな予算となっている。その編成方針は「『10年後の東京』の実現に向けた取組を加速させるとともに、いかなる状況変化の下でもその取組を支え得る持続可能な財政基盤を築き上げる予算」としている。そして「『10年後の東京』の実現など将来の東京を見据えた施策の積極的推進、都民生活が直面する課題など諸課題に取り組み、都民の負託に的確に応える」「施策の目的を確実に実現し、都民サービス向上のため、基金の充実などで、強靱な財政基盤の構築を目指す」の2点を基本としている。
 2006年12月に長期構想「10年後の東京」を発表した石原知事は、3期目となったが、予算編成にあたっては、一昨年7月の「今後の財政運営の指針」で示した07年度予算から3年間を「ゼロシーリングを基本」とする姿勢を貫きつつ、「『10年後の東京』への実行プログラム2008」(07年12月発表)にかかる施策に大きく予算配分している。この「実行プログラム2008」は、重点事業を3年分まとめて掲げ、その規模は総額1.7兆円に及び、「予算案」では4,706億円が計上されている。
 さらに、これらの施策を確実に実現する「強靱な財政基盤の構築」として、3回目となるオリンピック開催準備基金1,000億円だけでなく、社会資本等整備基金に2,581億円積み増しするなど、各種「基金」に3,623億円もの大幅な積立を行っている。
 オリンピック招致関連では、09年10月の開催都市決定までの期間の必要経費を当初の55億円から150億円に拡大し、08年度は立候補ファイルの作成等に56億円を計上している。加えてオリンピック招致を口実とする都市開発や臨海部開発に莫大な財政を投入するものである。しかし、「格差社会」が広がる中で、困窮する都民への生活改善、雇用・住宅・教育・福祉・医療などの施策には積極的な展開が見られない。
 以下、歳入・歳出の項目別で見ていく。

(2) 歳入について

 一般会計の歳入規模は6兆8,560億円で、3年連続で6兆円を超えた。07年度当初予算と比較して2,540億円増(3.8%増)である。歳入の多くを占める都税収入は5兆5,097億円と07年度当初に比べて2,067億円増(3.9%増)と高い水準を維持しており、うち法人二税は1,383億円増(5.7%増)の2兆5,548億円である。都債の発行は前年度比4.8%減の2,666億円で、起債依存度は一般会計で3.9%に下がり、健全な状態を維持したとしている。

@ 来年度の都税収入はバブル期を越える過去最高の5兆5,097億円を見込んでいる。好調な企業収益を反映した法人二税は、のびが鈍化したもの高い水準を維持しており、さらに税源移譲の平年度化などによる個人都民税増もあり、潤沢なものとなっている。

A 都債は2,666億円(△134億円、4.8%減)、過去17年間で最低の水準となり、国や地方財政計画と比べ極めて低い水準としている。それでも2008年度末の残高見込みは6兆4,000億円で都税税収の1.2倍となっている。

B 使用料・手数料について、精神障害者都営交通乗車証の無料化は評価するものの、住民間の負担の公平を図ることを口実に、一般埋蔵施設使用料(多磨霊園625,000円→882,000円/1u、小平霊園537,000円→795,000円/1u、)は実に25万円を越える値上げ、都立高校の授業料全日制(2009年度入学生から年額115,200円→122,400円)は7,200円などを増額し、さらに一般医薬品販売に係る登録販売者制度(試験手数料13,600円等)等の新設など、料額の改定・新設を18項目行い受益者負担をさらに強めるものとなっている。

(3) 歳出について

 莫大な都税収入にもかかわらず、一般歳出は引き続き内部努力や施策の見直し・再構築に努めるとし、「将来を見据えた先駆的な取り組み」とした「10年後の東京」の施策に重点的に配分する内容で、対前年度比1.8%増の4兆4,137億円となっている。
 投資的経費は、骨格幹線道路などの投資効果の高い事業に重点配分し、対前年度比6%増の7,318億円(都単独事業4,066億円=10.1%増)となり、歳出の10.7%を占める大きなものである。さらにオリンピックをはじめとした基金の積立額は、3,500億円に及ぶ。
 目的別内訳では、「警察と消防」が全体の20%を越え、「都市の整備」も20%に迫り、それぞれ200億円前後増加している。「福祉と保健」は231億円の増だが、後期高齢者医療制度関連が大きく影響しており、医療費負担の軽減や自立支援法対応等は不十分なままである。このことからも、都民要望に背を向けた予算編成であることが明らかである。
 給与関係費は、大幅な職員定数の削減等により179億円減(1.1%減)となっている。
 さらに「多摩都市モノレール」に300億円の経営支援するなど「負の遺産」にも対策している。

@ 「オリンピック招致」及びこれを口実とした「『10年後の東京』実行プログラム2008」が掲げる施策には、シーリング外で多額の予算を投じている。
 オリンピック招致本部は、「招致事業」として立候補ファイルの作成等で07年度6億円から25億8,100万円に、オリンピックムーブメント推進は07年度1億円から18億円に、新たに「招致委員会事業費補助」12億3,700万円を置き、総額56億円と爆発的に予算をつけた。基盤整備のための基金積み増しも1,000億円行われ、総額3,061億円となる。その上、各局の予算にも、招致につながる取り組みがちりばめられている。
 また「『10年後の東京』実行プログラム2008」関連は、総額4,706億円に及んでいる。三環状道路(首都高中央環状線・外環・圏央道)等の整備促進に1,614億円、東京港外資コンテナターミナルの整備や羽田空港再拡張事業に対する国への無利子貸し付け(総額1,000億円)を含む空港・港湾機能の拡充に372億円など、オリンピック招致を口実とした大企業本位の大型公共事業が多数盛り込まれている。

A 福祉関連の予算では、都民要望の高い特別養護老人ホームに係る費用を昨年に引き続き減額(13億3,600万円減)している。07年度に高齢者・障害者・医療保険・福祉保健補助制度を統合した区市町村包括補助事業は減額後復活したが、引き続き補助の根拠や基準をなくすなど後退を招かぬよう注視が必要である。
 都庁職が反対している神経科学・精神医学・臨床医学の3総合研究所の統合整備は、一期開設を09年度開設予定とし、78億円増の95億円を予算化している。
 さらに地域住民や区議会からも都の責任で運営するべきという要望が再三出されている老人医療センターと老人総合研究所との再編整備は、住民の声を無視して「健康長寿医療センター(仮称)」等の整備として地方独立行政法人運営に向け、4億7,300万円増の5億8,300万円が計上されている。

B都営住宅の建設等では493億8,900万円と07年度より約50億円増となったが、建て替えとスーパーリフォーム、耐震改修が中心で9年連続で新規建設が見送られたことは問題である。また多摩ニュータウン事業には156億円増額し360億円を宅地販売などとして計上している。

C 産業労働局予算が昨年に続き増加した要因は、中小企業応援ファンドの創設で、事業は中小企業振興公社に委ね200億円を計上した。しかし、これは貸付金に止まっており、若年者への雇用就業支援も十分と言えず、所得格差の拡大で、雇用や中小企業に対する大きな要望に、充分応えていない。
 しかし航空機産業への参入支援(07年度比6倍増の53億円)や重点戦略プロジェクト支援事業(1億2,400万円)など、大企業との関連性も懸念される事業は着実に予算計上している。

D 復活予算は例年と同じ200億円が財源で、「都市基盤の整備」には昨年度を上回る67億9,000万円がつき、その結果「予算案」における性質別内訳の「投資的経費」のうち、都単独が40億円を超え、前年度比10.1%増の高い伸び率を続けている。さらに区市町村振興の交付金等に70億6,000万円、福祉・保健・医療の充実として36億9,200万円が措置された。例年、私学助成は復活予算で上乗せされていたが、07年度の3,251億円から08年度1,388億円へと半減した。
 今回、「原案」発表から復活予算発表まで2週間以上あり、例年より長いもので、都民要望を受け止めたかのような体裁を取っている。

(4) 大幅定数削減について

@ 2008年度職員定数は、知事部局・公営企業・学校職員・消防・警察等全任命権者総計16万7,032人で、前年度から1,102人の定数削減を行った。これは「行財政改革実行プログラム」が掲げる2007年から3年間で4,000人の削減目標を2年目で57%達成するものである。警視庁を除く全任命権者が削減される中で、警視庁は削減されず、今回も「聖域」とされた。
 石原都政のもとで職員定数は21,787人削減された。うち知事部局は17,846人減(清掃区移管分を含む)、学校職員1,321人減となっている。しかし警察庁は1,202人増員しており、実質は約23,000人の職員削減が強行されることとなる。
 現在、職場では業務量に対する人員が不足しており、超過勤務の高止まりやメンタルヘルスを病む職員が増加を続ける異常な事態が続いている。職場実態を無視した「削減ありき」の定数削減の強行は、労働環境の悪化に拍車がかかる。さらに貴重な知識や技術・技能の継承が途絶えるなど円滑な業務執行に重大な問題となり、都民サービスの低下につながるものである。

A 知事部局は増員1,908人減員2,382人で、前年度比474人の削減となっている。その主な内訳は、委託によるものとしては徴収初動業務の一部39人削減、老人医療センター調理業務の13人削減、用地取得事務の委託拡大12人等となっており、業務の見直しとして、法人二税・事業所税の執行体制(ブロック化)の31人減などとなっている。さらに、板橋・東村山ナーシングなどで22人減、松沢病院病棟休止などで32人の減となっている。いずれも「行財政改革実行プログラム」に掲げる定数削減計画達成のため執行体制の徹底した見直しを行った結果としているが、事業所の移管・移譲や現業職場の委託拡大等都民サービスの低下に直結するもので容認できない。

B 監理団体の定数は前年度の8,743人から54人減の8,689人となった。これは地下鉄建設(株)の事業終了(日暮里・舎人ライナー)による55人減を反映している。また高齢者研究・福祉振興財団13人減や医学研究機構でも9人削減されている。一方、税務協会6人、東京水道サービス(株)136人が委託拡大で、保健医療公社10人、道路整備保全公社29人が執行体制の見直しで、公園協会が新規指定管理者事業などで17人増員された。都職員の派遣数も今年度は3,030人で前年度比で118人が削減された。これらは「行財政改革実行プログラム」でかかげた監理団体改革を着実に進め、「実行プログラム2008 」を踏まえ、さらなる都政リストラを推進している。

(5)組織改正について

 オリンピック招致に向けた推進体制強化で参事の配置や課の設置、知事本局の3部から6部体制にして、機動的で効率的な執行体制を行うとしている。
 さらに管理部門のスリム化として、総務局人事部と勤労部の統合が示された。これで6人の定数削減が出され、統合後は92人の大きな部となる。労働組合との交渉セクションであり、今後の労使の対応に注意をはらう必要がある。

(6) 2007年度最終補正予算案について
 都税収入は過去最高の5兆4,928億円となった。また補正予算は全会計で4,280億円の規模(一般会計3,738億円、特別会計425億円、公営企業会計118億円)となり、07年度当初予算とあわせると13兆5,277億円となる。一般会計における歳入は、半分以上が都税収入であり、当初予算に対して1,898億円増(3.6%増)は、主に企業収益の伸びに伴う法人二税が占めている。また、06年度決算剰余金は異例な規模の1,487億円が編入されている。
 これらは、同時に発表された「予算原案」と一体的に編成するとし、「法人事業税国税化対策特別基金(仮称)」を創設して2,185億円、財政調整基金への義務的な積立として1,124億円を歳出する。さらに「福祉・健康安心基金」「社会資本等整備基金」「緑の東京募金基金」にも合わせて71億円を積むとしており、都税収入の増加分は積極的に基金に貯め込んでいる。
 当初予算でシーリングを押しつけ、さらに決算で絞り込んで補正予算に回し、1年前の剰余金まで生み出して、基金に積み増すやり方は見過ごせない。今回の補正予算案も、医療・教育・住宅建設などの切実な都民生活関連施策ではなく、都民要求とかけ離れている。

3 都庁職の見解と態度

(1) 石原都政は3期目となったが、これまで「財政再建」を理由に福祉・医療・教育・雇用など都民に身近な施策や事業の切り捨て、職員定数の大幅削減や給与削減を強行してきた。その後、都税収入が順調に伸び財政状況が改善すると、突然「夢」を与えるとしてオリンピックの招致を全面に掲げた都政運営を行っている。「格差社会」拡大は深刻である。これまで我慢を強いてきた一般都民や職員に対して、思いやりのある施策展開こそ求められている。
 都は2005年「行財政改革の新たな指針」を発表し、その具体策「行財政改革実行プログラム」を2006年7月に策定した。これは財界の意向や国の施策を先取りして「官から民へ」「小さな政府」路線を実践し、自治体を変質させる構造改革を進めるものである。同時期に「今後の財政運営の指針」を発表し、「財政基盤は未確立」として「3年間はゼロ・シーリングを基本」とし、「負の遺産への対応」「基金の積立・取崩による財源の年度間調整」など、財政構造改革を進めるとともにオリンピック基金1,000億円の毎年度積立等を内容とした3年間の「中期財政フレーム」を示した。06年12月に発表された「10年後の東京」は、8つの目標からなる長期計画であり、都市基盤整備に重点が置かれ、オリンピック招致に向けた「都市戦略」であり、大企業の利益を追求するものである。
 07年7月に出された08予算編成に対する副知事依命通達では、企業収益が好調で都税収入が大きく伸びている状況にもかかわらず、今後の税収について「不透明」をことさら強調し、「10年後の東京」実現などの施策の積極的推進と施策の実現に向けた財政構造の弾力性を高めて強靱な財政基盤の構築を目ざすという基本方針が示された。これらは、莫大な都税収入をどのように都民に還元するかが問われる中で、都民生活改善ではなく、都政の行財政における構造改革推進、オリンピック招致に振り向ける方向を示すものである。
 知事の発案から始まった「2016年東京オリンピック招致」は招致に向けた取り組みが急展開されている。例年原案発表前に示される「重点事業」は、今年度「『10年後の東京』への実行プログラム2008」に姿を変え、3年間のアクションプランとして07年12月に発表された。総額1.7兆円、08年度事業費は約4,700億円となっており、「予算原案」にしっかりと反映されている。『10年後の東京』においては総額を示しておらず、3年間の「実行プログラム2008」では「アクセルを踏み込む」として1.7兆円もの大きな規模を示したが、この3年間は石原知事の残された任期と一致する。このプランは、毎年ローリング(改定)されるが、石原都政におけるパフォーマンスへの「アクセル」と言える。
 これらは「財政再建の成果を都民に還元していくことが求められる」とした「今後の財政運営の指針」とは全く逆の方向に進んでいる。「今後の財政運営の指針」が示した「中期財政フレーム(一般会計)」の見込みから5,000億円も会計規模がふくれあがっており、3年間の財政フレームの見通しが甘く、さらに見直しを行っていないことは大きな問題である。
 さらに石原都知事の強い意向で、税金を1,000億円も支出して「新銀行東京」がつくられたが、大きな赤字を抱え問題視されている。この責任や対応には触れておらず、追求していく必要がある。

(2) 福田内閣の「構造改革」路線は、「骨太方針」に基づき「小さな政府」作りを進め、国民に消費税増税など新たな税負担などの「痛み」をおしつけてようといる。石原都政はそれを先導し、「住民の福祉の増進」という地方自治体本来の責任を投げ捨てている。
 3期目に入った石原都政の「予算案」は、都民施策の後退や職員犠牲、税収増によって成し遂げた「財政再建」をベースに、2016年オリンピック招致やこれを口実とした「都市戦略」について「攻め」の予算措置を行い、一瀉千里に進めるものである。「投資的経費」は5年連続の大幅増加し、三環状道路や、物流改革にむけた交通網の整備など、「都市基盤整備」と称した大企業のための「大型公共事業」に大きく事業展開され、莫大な予算配分を行っている。その上、首都高速道路中央環状品川線や羽田空港再拡張など本来国が負担すべき公共事業にまで財政投入している。
 さらに、歳入や歳出で大きな舵取りが迫られると今後の都税収入の減少に伴う不安をあおりつつ、「備え」として「基金」に多くの積立を行っている。オリンピック基金1,000億円積み増しに加え、「社会資本等整備基金」に2,581億円、さらに「補正予算案」で国税化対策に名をかりて「法人事業税国税化対策特別基金」を創設して2,185億円を支出する。オリンピック招致と「10年後の東京」の実現に向け、ここでも予算の貯め込みが行われている。その結果、基金残高は2兆7,500億円となり、バブル絶頂期を越え、3年前の2.5倍にもなっている。
 一方で都民の暮らしに密着する都立施設はこれまでに150カ所も廃止し、さらにPFIや指定管理者制度の導入、地方独立行政法人化、民間委託や民間移譲の拡大、市場化テストなどで自治体の市場化をすすめ、「公」の事業からの撤退を推進している。来年度も、土壌汚染で問題のある豊洲への築地市場移転とPFI導入、医学系総合研究所(神経科学・精神科学・臨床科学)の統合、老人医療センターの地方独立行政法人化とPFI導入、松沢病院の改修とPFI導入等が進められ、都立公園の指定管理者制度導入の拡大などが強行される。
 これらは「行財政改革実行プログラム」に基づく都政の構造改革をすすめ、都政リストラを確実に行う内容であり、ここまで都民施策の切り捨てや都政リストラを続けてきた当局の責任は重大である。格差社会が進行する中で生活にあえぐ都民や、次世代を担う子どもたちに、直接具体的な支援を行うのが行政の責任である。福祉をはじめ医療・教育・住宅・雇用など都民生活をじかに支える施策への配分は低く抑え、都民要望に応えない都政のあり方は断じて容認できない。都庁職はオリンピック招致と都市開発に莫大な税金をつぎ込む石原都政の地方自治体行政の破壊や、その具体化である「予算案」に怒りをもって反対するとともに、都民要求と都庁職要求実現のために引き続きねばり強く闘い抜くものである。

(3) 職員定数では、1,102人(知事部局474人)の削減を強行し、3年間で4,000人の職員削減目標を掲げる「行財政改革実行プログラム」の57%を達成している。厳しい定数査定の中で、警視庁だけが削減されていない。石原都政の9年間における職員定数の削減は実に21,787人(清掃区移管分を含む)にも及ぶ。
 とりわけ現業職場については、老人医療センター給食調理委託、市場の巡視など各局の現業職の1つ1つを細かく削減しており、知事部局でも50人を越える。知事部局で増となったのは「オリンピック招致委員会」だけである。都民サービスの最前線で働く現業は切り捨て、「夢」で終わるかもしれないオリンピックには職員配置している。さらに「職員定数」の「今後の方向」では、大量退職期を迎え、「質・量とも働き手の確保が困難」と認識しつつも、多様な経営改革の手法(NPM)で施設管理を監理団体などに移管・委託することで、民間への丸投げの姿勢を明確にしている。
 職員定数の削減は、都立施設を統廃合し、様々なNPMの手法を使って委託・移譲・公社化することと合わせ、組織「改正」や業務の「見直し」等で押しつけられてきた。その結果、職場では、業務の維持すら困難な現状に拍車をかけ、職員に新たな犠牲と労働強化を強いてきた。これらは都民サービスの低下につながっている。
 今、大量退職期を迎え、ベテラン職員がこれまで培ってきた知識や技術、技能等知的財産の伝承が重要であり、人が人を育てるものでもある。「人材育成」を根本から否定する、この間のいき過ぎた職員の削減を見直すとともに、「実行プログラム」の4,000人削減目標を中止すべきである。また少子化社会の到来に対しては、妊娠・出産や育児・介護等家族的責任と仕事の両立ができる支援策の充実や職場環境の整備こそが必要である。都民ニーズに応えることができる業務量に見合うゆとりある職員配置、働きがいのある職場、誰もが健康で安心して働き続けることができる職場が早急に求められている。

(4) 組織改正では知事本局の体制が強化されたが、これは知事や副知事の「発案」をより強固に実践する体制を整備したものである。
 国の「公務員制度改革」攻撃は、公務員の労働基本権のわずかな見直しで、物言わぬ職員づくりと労働組合を弱体化させるねらいがある。このような中で、総務局人事部と勤労部の統合が行われる。当局は賃金確定闘争だけでなく、とりわけ都庁職予算・人員闘争における労働組合の戦術まで介入し、その上当局のいう「違法行為」には厳罰であたる姿勢を強めており、都庁職として毅然とした対応が必要である。

(5) 都庁職は、これまで数次にわたって臨海副都心開発など、「都市再生」の名による大企業本位の大型開発事業投資の都財政運営を抜本的に見直すことで、自治体本来の責任を果たし得る等、都財政再建の具体的な提言を行ってきた。
 その後、企業収益増によって大幅に都税収入が増加し、現在の都財政は「健全な状態」となっている。本来、税金は都民の暮らしのために使うべきであり、都政の第一線で働いている職員の声を集大成した都庁職の要求に真摯に耳を傾け、都民の生活や雇用を守るために、以下に示す方向で抜本的な政策の見直しをおこなうべきである。
@ 「オリンピック招致」「都市開発」「物流改革」の名による大型幹線道路等の建設、臨海副都心開発等大企業の利潤のための大型公共事業は直ちに中止し、「実質的投資総額」(投資的経費+公債費)を抑制すること。
A 首都高速道路中央環状品川線や羽田空港再拡張などは、国が本来負担すべきものであり、東京都の財政支出を取りやめること。
B 国直轄事業負担金等、国に強制された出費を一時停止すること。
C 都税収入増加の財源を活用して、福祉への投資や公共事業で雇用を創出すること。
D 地方税の原則を歪める法人事業税の一部国税化や地方消費税によらず、地方交付税の財源保障調整機能を回復させ、地方財政を確立すること。
E 新規都債の抑制と低利借り換えの実現による公債費負担の一層の軽減を図ること。

(6) 今回都庁職は、各局要求の提出時期や査定作業の進捗にかみ合わせた闘争を構築した。昨年4月に08年度予算人員要求闘争方針を確認し、各支部の協力を得ながら職場・分会からの要求集約や、各局要求が提出されるまでに行われる支部・局交渉を重視しつつ、通年開催となった「検討小委員会」で協議を求めてきた。
 7月19日に予算・人員に関わる基本要求書の提出、9月11〜12日に各支部と現評による重点要求の対都要請行動、査定作業が進んだ11月以降には都議会会派要請と合わせて、各支部最重点要求の提出を含め検討小委員会で職場実態を含めた具体的な主張を行った。さらにステッカー闘争、全組合員署名や所属長要請など職場からの取り組みも重ね、各支部・職場から積み上げた要求の実現に向け闘った。とりわけ、築地市場を土壌汚染の豊洲に移転するなをはじめとして、庁舎や庁有車などの改築・改修・更新、現業職・研究職の新規採用を含めた補充、超過勤務縮減やメンタルヘルスケア対応など職場実態を踏まえた仕事量に見合う人員配置などを強く求めてきた。12月20日には交流集会を開催し、同日対都要請行動では、署名の提出と要請を行って都庁職要求の実現を求めた。
 とりわけ予算編成に係わる基本要求や各支部・各職場から積み上げられた要求の実現を求め、福祉・医療・教育など、都民生活を支える都民施策の充実に都政の重点を置くよう主張し、自治体が責任を持って対応する体制をつくるよう要求してきた。
 さらに「賃金確定闘争」「予算・人員闘争」の一環として、都庁職「島しょ要求」「障害者要求」「研修要求」「新宿庁舎改善要求を提出し、「島しょ要求」「障害者要求」では対都要請行動も行った。当局の「管理運営事項」を理由とした取り扱いが強まる中で、都政リストラを許さず事業に責任がもてる執行体制を確保するため、査定作業がすすんだ11月以降は、検討小委員会で支部重点要求の実現を強く求めつつ、実質協議となるよう具体的な対応も行いながら、歯止めなき定数削減に反対してきた。
 しかし当局は、こうした道理ある要求に答えず「行財政改革実行プログラム」に基づく「構造改革」「4,000名の定数削減」推進の姿勢で、「オリンピック招致」と都市開発を加速させた「予算原案」の発表と定数通告を行った。
 都庁職はこのように一方的で、都民・職員を無視する当局の「予算案」や、大幅職員定数削減に対して、満身の怒りをこめた「抗議声明」を発表するとともに、復活要求に向けた取りくみを行った。
 今後も以下の点を基本として都民要望に応える予算編成を求め、全面的な都政リストラ攻撃に組織一丸となって反対し、都民とともに取り組みをすすめるものである。

@ 福田内閣の「構造改革」路線と連動する都政運営や、都民にさらなる「痛み」を押しつける「オリンピック」「都市基盤整備」中心の予算編成に反対し、福祉・医療・雇用・住宅など都民生活改善に向けた暮らし関連予算等に重点的に置く予算編成を求める。

A 予算・人員に関わる重要な課題は、職員の労働条件そのものに直接影響を与えるものであり、都当局の労使協議の対象としない「管理運営事項」とする態度を改めさせ、具体的実質的な協議ができるよう取り組みを強める。

B 石原知事がこれまでに行った21,787人の定数削減を糾弾し、都民サービスに応え、業務量や職場実態に見合うゆとりある職員定数配置を求めて取り組みを強化する。

C 憲法の理念と精神にもとづく地方自治の本旨の実現である都民本位の都政を実現するため、「憲法を命がけで破る」とまで公言してはばからない石原知事が推進する都政の実態を白日の下にさらし、広範な都民と連携しながら取り組みを強める。

以上

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