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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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都庁職新聞
 
2021年東京都人事委員会勧告に対する都庁職声明

 

2021年10月15日 東京都庁職員労働組合

奮闘する職員の期待裏切る勧告内容
60歳超の職員の給与水準を7割に抑える意見
期末手当削減は会計年度任用職員へ大打撃に

 

1 はじめに

 10月15日、東京都人事委員会は、都議会議長及び都知事に対し「職員の給与に関する報告(意見)」、「職員の給与に関する勧告」、「人事制度及び勤務環境等に関する報告(意見)」及び「定年の引上げに関する意見」を行いました。
 給与に関する報告では、例月給は、民間給与を103円(0・03%)上回っているが、公民給与の較差はかなり小さく、給与はおおむね均衡していることから、給料表や諸手当による例月給の改定は行わないとしました。また、特別給について、期末手当を0・10月引下げ、再任用職員についても、期末手当0・05月引下げるとしました。
 例月給は事実上6年連続で据置き、特別給は2年連続で引下げという私たちの期待を裏切る不当な勧告であり、到底容認できません。

 

2 2021年人事院勧告及び他団体の状況

 (省略)

 

3 東京都人事委員会勧告の内容と問題点

1.例月給の較差と給料の改定

 職員給与の報告と勧告では、本年4月における都職員の平均給与が402、898円であるのに対し、民間給与実態調査による民間従業員の平均賃金が402、795円であったとして、例月給の公民較差を△103円(△0・03%)としました。このため、例月給の改定を行わないとしています。
 しかし、都人事委員会が算出した民間賃金の地域差は、全国を100として東京都は121・1としており、都職員と国家公務員との給与水準比較では国家公務員の指数が100に対し、都職員の指数は100・9となっています。人事院による本年4月の全国の民間給与は407、134円となっており、人事委員会による本年4月の都内の民間給与は402、795円となり、指数にすると98・9となります。詳細なデータが公表されていないため、単純な比較はできませんが、職員も民間も東京都より全国平均が上回っています。
 また、今春闘の民間企業の賃上げ結果は、連合加盟全組合の平均で1・78%(5、180円)、春闘共闘の加重平均で1・93%(5、696円)でした。また、日本経団連加盟の中小企業でも1・68%(4、376円)の賃上げとなっています。
 都人事委員会勧告が低額になった要因は、2006年以降の比較対象の改悪(企業規模、事業所規模、対象産業)により、東京都の職員構成、年齢低下を反映できない公民比較方法となっていることであることは明らかです。現在の比較方式では、東京の民間賃金水準を都職員の給与に反映することはできません。
 例月給の引上げを行わないとした今回の人事委員会勧告は、新型コロナウイルス感染症対策や都民生活を支えるため奮闘している職員の大幅賃上げを求める思いを裏切るものです。
 都労連・都庁職はすべての職員の大幅な賃上げを求めています。

2.初任給

 初任給の改善は勧告されませんでした。国家公務員の初任給も人事院勧告で改善勧告はされませんでした。このため初任給は、東京都が大卒は3、000円、高卒は5、000円も国を下回ったままとなっています。
 また、都のV類(高卒)の初任給は、地域手当を含めず時給換算すると、935円となり、東京都の最低賃金1、041円を下回り、社会情勢と逆行しており大きな問題です。

3.特別給

 勧告では、特別給の民間支給月数が4・45月であり、都の現行4・55月を0・10月下回っていることから、都職員の年間支給月数を0・10月引下げ、4・45月とするとしています。また、再任用職員についても、0・05月引下げ2・35月とするとしています。0・10月の引下げは約4万円の年収減となります。特別給の引下げは、民間従業員の特別給における考課査定分の割合及び国の勧告内容を考慮し、期末手当で行うことが適当であるとしています。
 特別給は、2年連続の引下げ勧告となります。
 期末手当の引下げ勧告は、定年前の常勤職員と同じ月数の期末手当のみ支給されている会計年度任用職員にとっては、より大きな問題となります。また、勧告が実施されれば年間の期末手当は2・40月、勤勉手当は2・05月となり、勤勉手当の割合が45・1%から46・1%に拡大し、能力・業績主義が強化されることになります。
 都人事委員会の資料では、特別給の支給割合は1、000人以上の企業で年間4・88月であり、私たちの要求からすれば、特別給の引下げは到底納得できる内容ではありません。

4.諸手当

 諸手当に関する改善は勧告されませんでした。

5.再任用・会計年度任用職員の給与

 都労連・都庁職は、給料月額の引上げや定年前職員と同様の生活関連手当の支給を求めてきましたが、今回の報告でも処遇改善には全く触れていません。
 勧告では、再任用職員の給料月額の改定も行われませんでした。特別給は、0・05月分の引下げをすべて期末手当へ配分しています。これにより、年間の期末手当は1・35月、勤勉手当は1・00月となり、一時金に占める勤勉手当の割合は、再任用職員についても41・7%から42・6%に増大しています。
 再任用職員は、フルタイムが増え、仕事も正規職員と同様になっています。無年金期間が拡大しているにも関わらず、その賃金水準は「年金の足し」であった頃と大差ない状況が続いており、生活できる大幅引上げが求められます。
 会計年度任用職員についても、常勤職員との均等待遇と報酬額の大幅な引上げを求める都労連要求に全く応えていません。

6.60歳を超える職員の給与

 今回人事委員会は、「職員の給与に関する報告(意見)」に、60歳を超える職員の給与について項目を設けて、民間従業員や国家公務員の状況、60歳を超える職員の給与水準等について述べています。さらに、「定年の引上げに関する意見」を別に設け、具体的に意見を述べています。
 定年年齢の引上げについては、都労連と当局とでこの間労使交渉を行い、議論を重ねてきました。このため、人事委員会には、定年年齢引上げに関しては労使交渉事項であり、労使に介入することがないよう要請してきました。しかし、人事委員会はその要請を無視し、60歳を超える職員の年間給与について、60歳前の7割の水準にすることが適当であるとしています。また、諸手当については、国家公務員の設定を勘案して、各手当の性質に応じた設定をする必要があるとしています。退職手当については、現行の定年年齢以後に退職する職員が、不利益を被ることが無いよう、都と国との制度の違いに留意しつつ、国家公務員の取扱いに準じて適切に対応するべきであるとしています。
 また、新たに設定されるとする定年前再任用短時間勤務職員の給与について、現行の再任用短時間勤務職員と同様に取り扱うことが適当であるとしています。
 定年年齢の引上げ後の賃金水準等については、労使交渉で決着する課題です。

7.職務給の更なる進展等

 都人事委員会は、今後の課題の「職務給の更なる進展等」において、本年は給料表の改定は行わないが、行政職給料表(一)1級・2級の課題(上位級よりも昇給幅が大きい号給があることなどから、職責・能力・業績の給与への反映を徹底するため、その給与水準の見直し)の解決に向けた適切な対応について、定年年齢の引上げによる影響等を考慮しつつ、検討していくとしています。
 これは、当局の主張を後押しする意見であり、中立・公正な第三者機関としての役割と責任を放棄したものと言わざるを得ません。
 都庁職はこの間、給料表の構造については、都職員の生計費保障を基本に改善を図り、この間の昇給カーブのフラット化を是正することや、行政職給料表(一)1級・2級の引下げを行わないことを都人事委員会に要請してきました。この要請に完全に背を向けるものであり、絶対に容認することはできません。

8.新たな給与制度の在り方についての検討

 都人事委員会は、今後の課題の「新たな給与制度の在り方についての検討」として、今回の勧告で意見を述べている定年年齢の引上げによる60歳を超える職員の給与を60歳前の7割の水準とする取扱いは、時限的なものであり、定年年齢の引上げが完成した後は、60歳前後での給与水準が連続的になるように給与制度を設計する必要があるとしています。
 これは、60歳前から給与カーブのフラット化を行い、定年年齢が引上がっても、定年までに支給される総賃金を増やさないことを狙っています。

9.人事制度及び勤務環境等に関する報告(意見)

 新型コロナウイルス感染症の拡大という難局の中で、東京2020大会を開催したことは、東京の持つ底力を示すものであり、国際性、多様性といった都が目指す方向性を後押しするものとなったと冒頭で述べ、都という組織の成果のように述べています。しかし、この難局のなか、都民の暮らしを支え奮闘してきたのは職員一人ひとりです。都労連要求による改善で、応えるべきです。
 新たな時代における人事制度の在り方では、都政の新たな展開を踏まえた人事制度の検証、誰もが活躍できる都庁の実現について報告しています。
 都政の新たな展開を踏まえた人事制度の検証では、受験者の利便性の高い採用手続きのデジタル化やオンライン化の推進、WEB面接などにより、有為な人材を確保するとしています。また、都庁全体のDXを目指すため、ICT職の専門性を引き出す制度の構築や職員のデジタル意識の醸成が重要であるとしています。しかし、主任試験や管理職試験の課題については、依然として「検討」段階のままとなっています。
 誰もが活躍できる都庁の実現では、すべての職員がその能力や経験を活かし、実力を発揮できる環境が重要であるとしています。また障害を有する職員が働きやすい職場づくりに努めていくとともに、受け入れる組織を支える取組の強化が重要だとしています。都庁職としても障害を有する職員の労働条件改善にむけて「障害者の雇用及び労働条件の改善に関する要求書」を当局に提出し、改善を求めています。

10.働き方改革と勤務環境の整備

 働き方改革と職員の勤務環境の整備では、ライフ・ワーク・バランスの推進、職員の勤務環境の整備、公務員倫理の徹底などについて報告しています。
 ワーク・ライフ・バランスの推進では、テレワーク等の活用の推進として、テレワークを柔軟で多様な働き方の選択肢の一つとして、後戻りさせることなく定着させていくとしています。しかし、都庁の職場では、都民と接する現場等も多くあり、テレワークが根本的に不可能な業務も少なくありません。
 また長時間労働の是正として、コロナ対策等により増加している長時間労働の是正について、長時間労働の是正に向けた取組を強力に進める必要があり、取組を進めてもなお恒常的な長時間労働が解消されない場合には、業務量に応じた人員が適切に確保されているか検証すべきであるとしています。しかし、すでに長時間労働が慢性化し、一向に改善されない状況が続いています。都庁職として「超過勤務縮減及び36協定に関する要求書」を提出し、当局に改善を求めています。直ちに業務量に見合った人員配置を行うよう、具体的な意見を述べるべきです。
 柔軟で多様な働き方の推進・生活と仕事の両立支援では、育児、介護、治療等の事情のある職員を含めた誰もが活躍できる勤務環境を整備し、生活と仕事の両立支援を図る上で極めて重要であるとしています。しかし、具体的な対策については、4月に導入した出先事業所の時差勤務とフレックスタイム制について触れるのみで、制度の利用促進や休暇等を利用しやすい職場環境の醸成などについての具体的な意見はありませんでした。
 職員の勤務環境の整備として、ハラスメント防止対策では、ハラスメントが人権に関わる重大な問題であり、確実になくしていかなければならないとしていますが、ハラスメントが行われることのない勤務環境づくりや発生防止に向けた取組の推進を言及するに止まっています。
 性自認及び性的指向にかかわらず活躍できる勤務環境の整備については、職員が正しい知識を持ち、多様な性についての理解を更に深めるよう取組を推進すべきであるとしています。そして、職員が性自認及び性的指向に関わらず活躍できるよう職員の勤務環境の整備について、ハード・ソフト両面から検討を前進させ、実現可能な取組から速やかに実施すべきであると述べるに止まっています。

11.定年引上げに関する意見

 今回人事委員会は、定年引上げに関して、職員の給与に関する報告(意見)で触れるとともに、「定年年齢の引上げに関する意見」を別立てとして具体的に意見を述べています。
 意見では、定年年齢を65歳とし、2年に1歳ずつ段階的に引上げるとしています。60歳を超える職員の給料月額は、当分の間、60歳に達した日後4月1日の給料月額の7割にするとしています。役職定年制については、対象となる職の範囲、年齢、期間の延長及び特例等の設定について、国との権衡に配慮しながら都の任用実態を踏まえ定めるとしています。役職定年により降任された職員の降任後の給料月額が、降任前の7割に達しない場合の差額について、「役職定年調整額」として支給すると述べています。
 新たに設置される定年前再任用短時間勤務職員の給与については、都における現行の再任用短時間勤務職員と同様の取扱いとすることと述べています。
 また段階的な定年年齢の引上げの期間における暫定的な再任用制度の給与については、現行の再任用制度と同様の取扱いとすると述べています。
 このような人事委員会による具体的な意見は、労使交渉に介入するものです。定年年齢の引上げにともなう課題については、労使交渉で決着するものです。

 

4 都庁職の態度

 都庁職は、東京都人事委員会勧告に向けて、大都市東京に暮らす職員の生活実態を踏まえ、全ての職員の生活改善につながる大幅賃上げを求めて、都労連指令に基づく全組合員を対象とした人事委員会要請署名、職場一斉宣伝行動、ステッカー闘争などに職場・支部をあげて取組んできました。人事委員会署名については、新型コロナウイルス対策下の厳しい状況にある中、前年を上回る署名を集約してきました。
 しかし、2021年東京都人事委員会は、例月給の改定なし、特別給は期末手当を0・10月引下げるという勧告・報告をおこないました。通常業務に加え、新型コロナウイルス対策や東京2020大会応援業務に奮闘してきた私たちの期待を裏切り、事実上6年連続で給料表を据え置き、2年連続で特別給の期末手当を引下げるという大都市東京の民間賃金実態を精確に反映しない、極めて不当な勧告です。
 特別給について期末手当を引下げるとしたことは、職員の能力・業績を給与へ反映させることを狙いとしており、都人事委員会が「職責・能力・業績主義」の徹底を図る都側に加担する不当な内容です。期末手当しか支給されていない会計年度任用職員にとっては、期末手当の引下げは大きな影響を及ぼす課題となります。
 本年の報告では、定年年齢の引上げに関して、60歳を超える職員給与の水準や役職定年制に伴う役職定年調整額、定年前再任用短時間職員の給与、暫定再任用職員の給与などについて具体的な意見を別途行うなど、労使交渉事項に介入する報告が行われました。しかし、私たちが求めていた、長時間労働の是正や職場環境の改善などについては、具体的な意見の申し出はありませんでした。本年の報告は、全体的に当局の主張に沿ったもので、都労連・都庁職の要請に応えない不当なものであり、中立・公正な第三者機関の役割と責任を放棄していると言わざるを得ません。
 都労連は、不当な勧告と意見の押し付けを許さず、労使交渉による大幅賃上げと都労連要求の実現に向け全力で闘うとしています。
 都庁職は、都政の現場で働く全ての組合員が生活を維持し、誇りをもって働ける処遇改善を実現するために、職場・支部・分会からの運動を基軸にして取組を進めていきます。
 2021年賃金確定闘争において、都労連六単組の統一と団結を固め、要求実現に向けて都庁職の総力を上げて闘う決意です。

以上

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