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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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都庁職新聞
 
〈新春特別インタビュー〉
非正規雇用の処遇改善を交渉のテーブルへ

 

(公財)地方自治総合研究所研究員 上林 陽治

 

 東京都の専務的非常勤制度は、1993年度に運用が開始されました。非常勤職員の中には、20年以上、働き続けている人がいます。しかし、2008年度に要綱で更新限度が設けられ、雇止めの不安が広がりました。また、報酬額が低水準で、休暇制度なども不十分なため、労働条件の改善を求める声が上がっていました。
 昨年7月4日、総務省が、現行の臨時・非常勤職員の任用等に係る取扱いを再度検証することを求める通知を出しました。
 この通知を踏まえ、東京都は、一般職非常勤職員制度導入の提案を都労連に行い、賃金確定闘争の課題の一つとなりました。闘争の結果、一般職非常勤職員制度は、右下の表のようになりました。
 休暇制度などは改善されましたが、報酬額の改善や諸手当支給など、常勤職員との均等待遇実現には至っていません。今後、臨時・非常勤職員制度を改善していくことが課題となります。
 2015年度から、東京都で導入される「一般職非常勤職員制度」について、この問題に詳しい地方自治総合研究所の上林陽治研究員にお話を伺いました。

 

総務省通知の背景と狙い

 

質問者

 まず、総務省通知の背景と狙いを教えて下さい。

 

上林陽治さん(以下「上林さん」とします。)

 今の事態を放置していては、地方公務員制度を維持できないと、総務省が認識したことが、最大の背景です。
 理由は四つあります。一つは、臨時・非常勤職員の急増です。二〇〇五年からの七年間で一五万人増え、六〇万人を超えた。三年間で五万人の増加が確認された〇八年には総務省はすでに通知を出していますが、趣旨は徹底されず、自治体の臨時・非常勤が爆発的に増えた。
 公務員制度は、中立性確保のために、任期のない職員を中心にして安定した公務を運営することを原則とする建前があります。非正規職員が、正規職員に代替して、同じ仕事をしているという事態に立ち至り、これでは制度が持たないという危機感に繋がったのだと思います。
 二つめに、無知なのか悪意なのかはともかく、自治体が法令を無視しているということが散見されたということです。労働者性を有する職員を特別職として採用するのは、公務員法の趣旨に反しています。
 通勤費用を払わない自治体。時間外賃金を不払いする自治体。社会保険に加入させないために短い期間で雇う自治体。これでは信頼をおけないということです。
 三つめは裁判所の数々の指摘です。
 幾つか重要な裁判例があります。一つは、中野区の非常勤職員再任拒否事件。ここでは非正規職員にも雇用継続の期待権が生じると言われた。東村山市嘱託職員退職金支給事件では、職務内容が常勤職員と同様であり、勤務実態から見て常勤職員に該当することが認められると言われた。中津市の退職手当請求訴訟では、常勤的非常勤職員にも退職手当が支給されるとしている。東京都消費生活相談員の訴訟では、団体交渉拒否が憲法の認める労働組合の団結権を侵害すると指摘された。
 四つめは立法府の動きです。各種手当を出せるようにする自治法改正案を野党が議員提案しました。勤務内容に応じて勤務条件を確保すべしとする付帯決議もあった。
 〇九年の総務省通知は公務員課長通知でしたが、今回は公務員部長通知です。総務省の危機感と強い意志の現れでしょう。

 

一般職非常勤職員とは何か

 

質問者

 一般職非常勤とは、どのような職なのでしょうか。

 

上林さん

 全国状況からは、非常勤を特別職で採用していないところは一般職で採用し、一般職で採用していないところは特別職と単純に区分できます。つまり二者択一で、何の基準も定義もありません。
 例えば、大分県内の非常勤の一般事務職員の任用状況は、大分県庁は特別職、大分市も同じ。しかし、別府市は一般職。日田市は臨時職員。臼杵市は一般職と臨時職の混合。つまり自治体が任意で選択しているに過ぎない。
 地公法では、地方自治体にいる者を全て公務員としており(二条)、特別職以外のものを一般職と規定します(三条)。特別職は首長、議員、地方公営企業の管理者等の9種類で、このうち特別職非常勤は、三条三項三号で調査員と嘱託員が規定され、これが活用されてきました。
 総務省は、雇用主の指揮監督関係にあり、労働の対価として報酬を得るものは、一般職であるという解釈を守っています。特別職は非専務的で、専務的な特別職というのは、考えられないのです。

 

東京都の新制度導入について

 

質問者

 東京都が導入する一般職非常勤制度が、来年度から始まります。現時点で、どのように分析をされていますか。

 

上林さん

 一般職か、特別職かということは、採用の種類に過ぎません。任用の根拠と言えるのは、自治法一七二条で、首長によって公務員は任免されます。そして、自治法に基づいて、非常勤には報酬や費用弁償が支払われる。
 問題は、特別職か一般職かという議論の陰で隠蔽されてきた部分です。
 これまで東京都は、任期が切れた後の取り扱いは首長の任用行為に係ることであり、交渉事項ではないという考え方でした。これをどの様に改めるのか。
 また、常勤職員の給与との権衡ですが、国家公務員の一般職非常勤は、給与法が適用されて、人事院規則に基づき給与が決定されます。
 国の場合、一般職非常勤は、正規職員の給料表を使って、1級初号俸から始まり、更新ごとに経験年数調整を行い、号俸を積み上げるというやり方を人事院のガイドラインとして各府省に示しています。何年も勤めた人と初年度の人と俸給が異なるのは、合理的に説明されているのです。また、任期があっても、主任にするなど職責を変更し、給料表の1級を2級に昇格させていけばいいのではないでしょうか。


非正規雇用の処遇改善の課題

 

質問者

 非正規雇用職員の処遇改善の課題は何だとお考えですか。また、労働組合に期待される役割は何ですか。

 

上林陽治さん

 後者から答えます。正規・非正規間は分断の状況にあります。従って、非正規職員を組合員にし、正規・非正規の壁を取払い職場環境を整える。そのためにどうやって交渉のテーブルに載せるかを考えることが、労働組合に今できることだと思います
 問題解決のルートは二通りです。一つは、制度を前提に実態を変更するやり方です。
 しかし、これでは問題の解決になりません。なぜなら、現状で、臨時・非正規職員が担っている仕事は、補助的・臨時的業務ではないからです。非常勤に仕事を丸投げされている分野も多い。臨時・非常勤職員はすでにノウハウを有し、職業上のネットワークも構築しています。
最近の判例法理では、常勤職員の3/4を超える勤務実態にあれば、常勤職員と見なすという判断が出ています。自治法上は常勤職員なのです。そもそも、大部分の専務的非常勤の仕事に期限があるとは思えません。制度と実態が乖離しているのですから、実態から読み解くルートを採用するほかないのです。
 実態から物事の解決を図るためには、「入口」、「内容」、「出口」それぞれの議論に分けて考えるべきでしょう。
 出口議論では、雇止めを止めることが重要です。総務省通知では、雇止めをしなければならないという法令は無い、再度の任用は妨げられないことが強調されています。任期を設け、自治体の都合で雇止めにすることを止める。身分保障の考え方を入れる。空白期間は置くことを止める。社会保険の事業主負担分逃れを止める。雇う側の都合でやってきたことを改めるべきです。
 内容の議論では、国家公務員の一般職非常勤の制度が参考になります。職種別の俸給表に基づいて賃金を決定し、経験年数に応じて給料月額が上昇します。期末手当や地域手当も、支給される。要件を満たせば退職手当も支払われる。国家公務員の非常勤と地方公務員の非常勤を区分けしなければならない理由はないでしょう。東京都も、せめて国並みにすべきでしょう。
 入口の議論では、ジョブ型公務員制度という考え方があります。一つの仕事を専門的に担い職種を超えた異動は無いが、昇進等も限定される。しかし任期は付さない。専務的な非常勤は常勤職員並みの勤務時間を勤務し、基幹的な業務につき、一つの仕事に専門的に従事する。したがって任期の定めを取り払えばこのような制度下に置くことになる。雇用を安定させることで、公益上、良い成果を生み出すと思います。

一般非常勤職員制度(2015年4月1日運用開始)

 

  *  *  *

上林 陽治

1960年、東京都生まれ。國學院大學大学院経済学研究科博士課程前期修了。自治労本部職員などを経て、2007年より現職。現在、関東学院大学経済学部兼任講師、佐倉市指定管理者選定委員会委員長を兼務。
《主要著書》
『非正規公務員という問題』(岩波ブックレット)、『非正規公務員』(日本評論社)、『公害防止条例の研究』(共著)(敬文堂)、など。

 

上林陽治さんの著作

非正規・有期の公務員の実態をわかりやすく解説。公務員法でも、労働法でも守られないままに、国を地方を支える人びとの姿を追う渾身作。 「官製ワーキング・プア」の温床とも言える臨時・非常勤職員の地方公務員は60万人を超える。彼らの雇用と処遇の改善策を提起する。

 

 

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