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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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都庁職新聞
 

反貧困運動と交流・連携を
自治体労働者に期待する

反貧困ネットワーク代表 弁護士 宇都宮 健児(うつのみや けんじ)さん

 2008年暮れのニュースを騒がした「年越し派遣村」の名誉村長が宇都宮健児さんです。反貧困ネットワークは、その後、全国各地に広がりを見せ、多様な取り組みになっています。私たちは「期待」にどう応えられるのだろう。

宇都宮 健児(うつのみや けんじ)さん
宇都宮 健児(うつのみや けんじ)さん

プロフィール
1946年   愛媛県に生まれる
1969年   東京大学法学部中退、司法研修所入所
1971年   弁護士登録、東京弁護士会所属
全国ヤミ金融対策会議代表幹事、反貧困ネットワーク代表、年越し派遣村名誉村長、週刊金曜日編集委員
著書
『消費者金融 実態と救済』(岩波新書)
『派遣村?何が問われているのか』(宇都宮健児・湯浅誠編著 岩波書店)
『反貧困 ? 半生の記』(花伝社)など
 
 厚生労働省は、2009年10月、国民の中での低所得者の割合を示す「相対的貧困率」が2007年においては15・7%であったと発表した。OECDによる相対的貧困率の調査では、2004年の日本の相対的貧困率は14・9%であったので、貧困の悪化が明らかになったと言える。また、同年11月には、厚生労働省は、一人親世帯の相対的貧困率が、2007年においては54・3%に上ったと発表した。
 わが国で貧困率が発表されたのは、これがはじめてのことである。OECDの相対的貧困率の調査では、先進国の中では日本は、アメリカに次いで貧困率が高くなっている。また、一人親世帯の貧困率は、OECD加盟30か国中最悪となっている。
 相対的貧困率の測定は、この間反貧困ネットワークが政府に対し強く要求していたものである。
 これまで、わが国政府は、経済成長を遂げることで国民生活を豊かにできると考え、もっぱらGNP(経済成長率)を上げる政策に重点を置いてきたが、わが国社会の現状を見ると、経済成長率が上がっても貧困と格差が広がってきているのが実状である。このため、反貧困ネットワークでは、国民生活の健全さを示す指標として経済成長率とは別に貧困率の測定を行い、貧困率の削減目標をたてることが重要であると考え、政府に対し要求してきたものである。
 政府は、貧困率を発表したが、まだ貧困率の削減目標については、明確な方針を定めていない。早急に政府は貧困率の削減目標を定め、労働・医療・教育・住宅・年金・介護等にまたがる総合的な対策を立てるべきだと考える。

貧困対策に決定的に
重要な国や地方自治体の役割


 反貧困ネットワークは、見えにくいといわれる貧困を顕在化させ、貧困問題を社会的・政治的に解決することを目指して、ホームレス・フリーター・派遣労働者・シングルマザー・障がい者・病者・多重債務者・生活保護受給者などの貧困当事者や支援団体の支援者が、それぞれの抱えている問題の枠を超えて、2007年10月に結成されたネットワークである。
 反貧困ネットワークは、これまでさまざまな団体と協力して「反貧困フェスタ2008、2009」、「反貧困全国キャラバン2008」、「反貧困全国キャンペーン2009」、「反貧困世直し大集会2008、2009」などの取り組みを行うとともに、労働団体などと協力して年末年始の「年越し派遣村」の取り組みも行ってきた。現在、18都道府県に反貧困ネットワークが結成されてきている。
 日本で貧困が拡大する大きな要因となってきたのが、脆弱な社会保障制度とワーキングプア(働く貧困層)の拡大である。
 ワーキングプア対策・貧困対策については、国や地方自治体の役割が決定的に重要であることはいうまでもない。
 当然のことであるが、国や地方自治体には、派遣切り・雇い止めされた労働者や貧困当事者を救済し支援する責務がある。特に住民に一番身近な地方自治体は、住民の命と暮らしを守る責務がある。
 雇用情勢が悪化する中で、現在、仕事と住まいを失ったホームレスが全国的に急増している。支援団体が行う炊き出しに並ぶホームレスの数は、昨年同時期と比べてどこも2倍近くに膨れあがっている。
 このまま冬を迎えれば、「年越し派遣村」より更に深刻な事態を迎えることになると、支援団体は危機感を募らせている。
 現在、政府は緊急雇用対策本部の中に、「貧困・困窮者支援チーム」(事務局長・湯浅誠内閣府参与)を設置し、全国のハローワークを拠点に年末年始の「ワンストップ・サービス」を実施する準備を進めている。ワンストップ・サービスが十分に機能するためには、国と自治体の協力が欠かせない。

関連部局が連携して大きな力の発揮を

 地方自治体には、生活保護、低利融資制度、介護・高齢者支援、教育・子育て支援、精神障害者支援、公的施設・公営住宅などを担当する部局が存在し、これらの部局が連携を取りながらうまく機能すれば、ワーキングプア対策・貧困対策に大きな力を発揮することができる。また、千葉県野田市が制定したような「公契約条例」が全国の自治体に広がれば、ワーキングプア対策として大きな役割を果たすことができるものと考える。
 また、地方自治体で働く公務員労働者は、住民の中のワーキングプア対策・貧困対策に取り組むとともに、自らの足元の「官製ワーキングプア」対策にも取り組む必要がある。地方自治体で働く公務員の中にも、低賃金で働かされ、雇い止めなどの雇用不安を抱える臨時職員、非常勤職員、嘱託職員などの「官製ワーキングプア」層が拡大しつつあるからである。
 最後に、私達民間の反貧困運動との交流と連携を提案したいと思う。ワーキングプア対策・貧困対策は官民一体となった取り組みが重要だと考えるからである。また、このような交流と連携が深まることで、住民の命と暮らしを守って活動している地方自治体や公務員労働者に対する住民の信頼・支援を獲得することができるのではないかと思う。

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